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2023年5月17日開催セミナーレポート

野村総合研究所様ゲスト 本気のエンゲージメント向上事例を特別公開 ~管理職による組織開発によって実現するエンゲージメント向上の効果とは?~

上林本日はご参加いただきありがとうございます。本日の全体の流れとして、弊社から簡単にエンゲージメントと組織開発の前提知識をレクチャーさせていただき、その後、ゲストに野村総合研究所の大塚様、増永様をお迎えし、実際のお取組みや事例についてお話しをお伺いしていきたいと思いますので、改めて どうぞよろしくお願いいたします。

組織開発とは何か

上林テレワークや多様な人とのかかわりが増えてくると、あうんの呼吸で仕事をすることが難しくなります。人材開発は、人に対してアプローチしていく施策で、例えば1というのを1.5に変えていく施策です。それに対して、組織開発は、集団の関係性にアプローチして集団のレベルを上げていくものです。例えば、1+1+1<3にしていくということです。一人ひとりの能力をあげなくてもチームの能力があがるので、管理職が凄く楽になります。これは、多くの管理職が欲しいスキルの一つだと思います。なぜ、1+1+1<3にすることが難しいかと言うと、技術課題ではなく「適応課題」であるからです。人と人との関係性や、物の見方が変わらない限り解決できないものであるということです。 例えば 管理職が部下の仕事を引き取ったという事実があった時に、「すぐに助けてくれる良いマネジャーだよね」という見方もあれば、「部下を信頼していなくて、仕事を奪っているよね」という見方もあります。この解釈の違いが生まれることが、問題の根幹であり様々なことを阻害する要因でもあります。 実際に仕事をする中で A 部署 と B 部署の関係性が悪く、重複して作業をやっていて効率が悪く協働できていないということがよくあります。また、上司がたくさん施策をするけれど、部下が全然受け止める気がない、チームの中で助け合えば良いのに助け合わないといったことが多数あったりします。

「対話」とは何か、なぜ必要なのか

上林認識のずれから起こるものを整えることが必要です。「組織開発の探求」という著書では、立教大学の中原先生と南山大学の中村先生は、見える化ガチ対話は、未来づくりのステップが大事だと言っています。今回、この組織開発はガチ対話をするということです。言葉にすると平易ですが、非常に効果が高いと思っています。なぜ平易と解釈してしまうかというと、やはり「対話」というとただ雑談すればいいと解釈してしまうからです。雑談はただお互いの印象を良くするものであり、討論や議論は何かを着地させに行くものです。「対話」は、お互いの前提 や意見の違いを分かり合おうとするものであるということが大きな違いになってきます。対話は、何かを決めることではなく、認識のずれを正しく理解し合うことです。お互いの見えていない部分を認識しあって、ずれを調整することです。 そうすることで、お互いを理解、尊重しイノベーションが起きやすくなったり、相手のことを信頼できたり自己肯定感が高まったりすることがポイントになります 。 本日の冒頭で、信頼関係が薄くなっているというお話もありましが、どのようにして信頼関係を高めるかというと、例えば接待や会食があります。接点が少ない方と食事に行って、全然知らないことを知ることができます。家族構成や趣味などを知った瞬間に、どんどん距離が縮まって信頼関係が築けるという経験をされたことがある人も多いのではないでしょうか。 職場の飲み会で距離が縮まったことがあると思いますが、メカニズムとしては見えていなかった部分をお互い知り合うことで共感が生まれ、結果的に信頼関係が生まれるということです。対話も同じメカニズムですので、定期的に対話がしっかりやれている組織は、信頼関係が築きやすいということになります。弊社で組織開発を支援する中で、ロジカルで問題発見解決が高い会社であればあるほど、すぐに合意にもっていきがちで対話ができないというケースもあります。 なぜこの対話がエンゲージメント向上につながるのかと言うと、対仕事においてはお互いに仕事の背景が見えにくくなっていることを認識し、理解することで何のために行う仕事なのかをよく理解できるということがあります。対周りは、同じにチームメンバーの状況を知ることで、例えば、介護や育児など家族のことで大変なので協力し合えることができたりします。対自分は、自分自身のこだわりを周囲に知ってもらうことで存在意義を感じたり、 自己肯定感が上がったりすることで、 エンゲージメントも高まるということがあります。 これが組織開発と呼ばれる1+1+1<3になるアプローチです。組織開発というと、どうしても偉い先生が実施するものだ、応用力が大事であり形式化できないものだ、効果がわかりにくいという前提があることが多く、及び腰になることを見てきました。 今回実施させていただいた組織開発は、管理職が主導で行ったものであり、チーム単位で1+1+1<3にするアプローチになります。

対話を促進するCocolaboのツールとは

上林弊社のCocolaboのツールを使って型を理解し、それを応用させるというアプローチになります。また、集計して傾向値を把握し効果を見ていくことができるものになっています。 このツールを活用いただきながら、NRI様には全3日間で、見える化ガチ対話 未来づくりと紐付けてエンゲージメントの理解と対話のポイントをレクチャーし、その後、宿題として2週間内に自部署で実践していただくような形になります。実際にCocolaboのツールを使って職場の課題について対話してきていただきました。今後定着できるように、また自分のスキルとして消化できるように学んでいただいて実施するということを行いました。この全3回シリーズを1ヶ月でやるプログラムを、NRI様では2021年から導入いただいております。 Cocolaboには「カルテ」と呼ばれる個人が何を大事にして仕事をしているかがわかる診断ツール、「キックオフ」と呼ばれるチームが期初に行うミーティングを最適に進めるツールで、チームにどんなことを期待しているか、どんなことを目標にするかを話し合うツールがあります。また、組織の課題を「オバケ」と称して、今の組織にどんな課題があるかをお互いに認識し合って話し合うツールを用意しています。全て対話をすること目的に、相手の背景を理解し、他者との違いや認識の違いを炙り出せるように作られています。 チームでミーティングをして、何となく仲良くなって終わるのではなく、お互いの認識の違いをはっきりさせるということが重要なポイントです。例えば「オバケ」ツールで、12種類のオバケ(組織課題)について、どれが一番かを選ぶことでお互いの違いを作っていきます。その結果を見て、みんなでコメントを出し合って違いの背景を知り合うこと行います。ここがこのツールの根幹です。 こういったツールを活用いただきながら、エンゲージメント向上を支援させていただいておりますNRIの大塚様と増永様をお迎えし、これから1時間ほどパネルディスカッションをさせていただければと思います。
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エンゲージメント向上の取り組み「働きがい共創」とは

大塚様(以下敬称略)NRIの大塚と申します。本日はよろしくお願いします。会社の概要と弊社の取り組んでいる活動についてご紹介させていただきます。私はもともと金融系のシステムエンジニアとしてNRIに入社しました。10年ほどプロジェクトリーダー、プロジェクトマネジメントをやっていました。自分自身のやりたい領域が、システムよりは人や組織に興味関心があり事業本部の中での人材開発に取り組んでいくことになりました。その中で組織開発を事業本部の中で行っていました。 2年前から、全社でエンゲージメント向上の活動をやっていく流れになり、私が以前事業本部で取り組んでいた経験があったので、全社でもやってみないかということで声がかかりました。現在は全社の人材開発部に所属し、働きがい向上活動の推進を行っています。
上林ありがとうございます。では、増永さん自己紹介をお願いします。
増永様(以下敬称略)増永と申します。私は入社して8年くらいシステムエンジニアをやっていました。その後20年ほどシステムコンサルタントをやっており、3年前からシステムコンサルティング事業本部の中で、採用と育成を担当する人材開発室でグループマネージャーをやらせていただいています。人材育成に関しましては素人な部分があり、結構苦労しながらやっています。本日は何か少しでも皆さまのお役に立てることがあればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
大塚本日お伝えさせていただくお話の中で、参考にできるものが1つでも多くあれば嬉しく思いますので、どうぞよろしくお願いします。 弊社の社員構成は、約9割はシステムエンジニアになります。売上構成は、コンサルティングは実は7%ぐらいで、他は金融や産業分野での IT ソリューションがメインとなる会社です。なかなかコンサルとシステムの両方を強みにしている会社は他にないので、そこが弊社の特徴であり強みだと思っています。 何かすごい物や資産を持っているわけではないので、価値を創出していくためには社員一人ひとりの強みを発揮していく必要があります。そして、システムエンジニアだろうとコンサルタントだろうと縦で区切るのではなく、一緒にコラボレーションしながらのお客様を含めて共創していくような考え方が大事になってきます。 そこで2年ほど前から経営と一体となって エンゲージメントを高めていく活動をしていく必要があるということで声がかかりました。先ほどもお伝えした通り、事業本部で組織開発をやっていた経験もあり、全社で取り組んでいこうとなった時に「働きがい共創」という名前をつけ、活動を推進して3年目になります。 ネーミングの由来は、「働きがい」はそのままの意味ですが、「共創」は私のような人材開発部の立場にいる人と、事業部の現場の人たちが一体となって取り組んでいきたいという想いを込めた「共創」でもあり、上司と部下の双方がエンゲージメントを構成する一つですよという意味も込めて名付けて活動しています。 人材開発部の中に組織開発チームというものを立ち上げて進めているのですが、社内でこの活動を進めていく時に、「エンゲージメント向上」をやりますよというよりは、先に「働きがい共創」をやっていきますと伝えています。ただ、「組織開発」や「エンゲージメント」という言葉が出てくるので、「働きがい共創」との関係はどうなっているのか迷う人も出てきます。 そこで、人材開発部では、経営が示した絵を参考に「社員と会社の間の関係性の部分をエンゲージメントと言います」とお伝えしています。社員と会社のつながり、関係性を高めていく要素や活動はたくさんあります。例えば、少し前まで流行っていた「働き方改革」などの人事施策や、一人ひとりの人材を育成する人材開発もあります。その中に、「組織開発」という親和性の高いパーツがあるという位置付けで社員には示しております。まだまだ組織開発という言葉や意味合いを知らない社員もいるので、丁寧に伝えています。 私たちのチームが何をやっているかと言うと、現場で働きがいを向上するために取り組んでいることを、インフラで情報発信をしたり、コミュニティを作って一緒に学んだり、研修を立ち上げて学びの場を提供したりしています。また、事業部門の中で組織開発をやりたいという声を受けて、HR部門のHRBPの方々と一緒に活動(活動支援)したりもします。

何もしないとエンゲージメントは下がっていく

上林ここから、さらに詳しくお二人にお話をお聞きしていきたいと思います。 大塚さんにご質問ですが、社内で「働きがい共創」の活動をされているとのことですが、我々のような外部から見ると野村総合研究所様は、東大含めた上位者の採用人気ランキングでも 1位の企業であり、人の採用や定着に関しては何も問題がなさそうに見えます。「エンゲージメント」や「働きがい」の向上は、採用が難しく人が辞めそうだから手を打つケースも多い中、NRI様が社員の「働きがい」や「エンゲージメント」を意識して、取り組んでいらっしゃる背景は何でしょうか?
大塚はい、ありがとうございます。人的資本開示が求められる時流の中で、経営層からするとエンゲージメント向上施策をやることは当たり前で、やったうえで更に開示していかないと市場からも評価されない時代になっていると捉えています。当然会社の未来を担う人材も採用できなくなります。上林さんのお話の中で、平均と比較してというお話がありましたが、エンゲージメントが低い組織だからやらなければいけない、高い組織だからやらなくていいという話ではなくなっていると思います。周りと比較してどうというよりは、その組織 自体の現状を過去と比べて高めていく活動自体は、今はもう必須なのではないかと思っています。本当に何もしないとエンゲージメントは下がっていくので、世の中の流れがどうと言うよりは、やらなければならないという意識で活動しています。
上林ありがとうございます。何もしないとエンゲージメントが下がるという前提で、先手を打って取り組んでいくことが大事ということですね。また、取り組んでいるからこそ市場からのご評価が高い会社なのかなと感じました。 増永さんにお伺いしますが、本社が結構早い段階からエンゲージメント向上に取り組んでいるというお話でしたが、現場はかなり忙しい中で、どのように受け止められていたのでしょうか?
増永本部では、一昨年から年に1回の全社サーベイを実施しています。実施してみた結果、数字自体は悪くはなかったです。ただ、最近業務が多忙になってきて、一部の部署では数字が少し下がり気味という実態もあります。また、私のグループは、コンサルタントなのですが、コンサルタントの案件をやっているわけではありませんので、成長機会やキャリア 機会に関する数値が少し低く出てきています。そこは課題として捉えています。

想いとパッションを持って活動を推進している

上林全体でみると良いが、小さい部分でみると課題も見えてくるということですね。 今チャットの質問でもあがっていますが、「働きがい共創は全て社内メンバーで内容構築してらっしゃるのですか?」という質問がきています。大塚さんからみたサーベイの活用度と現場からみたらサーベイが反対ですというパターンもあると思いますが、何かしら実施する際の壁や、工夫したことがあれば教えてください。
大塚働きがい共創は、基本的には社員が中心となって実施しています。もちろん、研修などの一部は外部のリソースを活用しています。人材開発部のメンバーは、もともとシステムエンジニアやコンサルタントやっていた人で構成されています。現場にいた頃に課題感を持たれていた方が多く、組織開発を学ぶ機会があり、これを現場でやれば会社は良くなるのではないか、という共通の想いを持っています。人数は少ないのですが、かなり想い・パッション・知見がある中で進められていると思います。 現場の活用状況・打ち手はどうだったかというと、本社が何か施策をやりますと言うと皆さんきちんとやってくださる文化があるのですが、一点気を付けたことがあります。それは、サーベイを取った後はどうするの?という問いに対し、受け皿をしっかりと構築したうえで実施しました。具体的には、活用方法については動画を公開したり、研修プログラムの募集を並行したりしました。サーベイを実施したけれど、その後どうすればよいか迷わないように、その部分はかなり力を入れてやりました。
上林サーベイの結果はダイエットにおける体重計と同じなので、実施した後の受け皿をしっかりと用意したということですね。実際、NEWONEが提供したプログラム以外のものも多く走っていると思いますが、必須じゃないと誰も応募してこないのではないか、など募集することに苦労する会社もあると思うのですが、企画する中で難しかった点や工夫された点を教えて下さい。

公募は社内の仕組みをうまく活用した

大塚おっしゃる通り、公募制にすると本当に来てほしい方に来てもらえない難しさがあります。初年度は完全に手挙げ制の公募にして、裏で興味がありそうな方には声をかけましたが、それほど集まりませんでした。そこで、2年目はやり方を変えて公募ではなく、本部長推薦講座の中に組み込みました。本部長推薦講座は、各事業部のHRBPが告知をしてくれて、各事業部から参加者が集まってくる仕組みがあるのですが、これに載せたことで結構集めることができました。1年目だけ苦戦しましたが、2年目以降募集の仕方を工夫したところ、今は少し広がってきた感じがあります。
上林本部長推薦講座は、本部長が行っていいよという位置づけのものだと思いますが、会社によっては、上の方がNOを出す場合もあります。上の方が反発してNOと言わない理由は何だったのでしょうか?
増永弊社の良いところの一つとして、研修はどんどん受けなさいという風土があります。回りまわって会社のためになるからです。自分の仕事は自分で何とか調整して受けなさいという考えがありますので、本人の意志があれば受けることができます。
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1on1だけでは限界を感じていた

上林忙しい中で今回のプログラムに参加される方が多いと思うのですが、研修を受けたいと思う理由や心理的ブレーキはありましたか?
増永グループのメンバーのエンゲージメントを高めたいと思っていました。メンバー同士のコミュニケーションが少ないことに課題感を持ってからです。それぞれ担当役割があり、個々人の中で仕事はまわるのですが、私の想いとしてはもっと情報共有することで、コミュニケーションが増えれば業務の質が上がるのではないかと思っていました。
上林コミュニケーションが少ないという課題を感じた際に、何をしたらその状況を打破できるか、それがわからないというケースも多いです。このポイントを押したら良さそうだという仮説はあったのでしょうか?
増永1on1はやっていたのですが、それだけだと限界を感じていました。もっと良い方法があるのではないかと感じていました。
上林1on1の限界とは、具体的にどんなところでしょうか?
増永1on1では個人の悩みは拾えますが、組織としてシナジーを出して活動していける状態にすることは難しく、そこに限界を感じました。
上林なるほど。そういえば、日々1on1を実施してきたが、1on1だけでは大きく変わらず、組織で活動することで変わったという意見があったことを思い出しました。今回、全3回の研修を受けて、現場で実践するという流れでしたが、増永さんとしてやってみて気づいたこと・感じたことがあれば教えて下さい。
増永1つ目はCocolaboを使ってグループ内で対話をしたところ、グループ全体でメンバーの意見を共有することができたことです。2つ目は研修の中でおっしゃっていた言葉で、Wevoxのスコアの結果に一喜一憂するのではなく、ありたい姿を設定した上でどの項目を伸ばしたいかにフォーカスすることが大事だということに改めて気づきました。
上林エンゲージメントサーベイは多くの会社で実施していますが、結果の上がり下がりに一喜一憂することは結構あります。全ての項目を上げることが正しいわけではなく、こういう組織を作っていきたいと考えることが大事です。ここはとても大事なポイントです。 チャットに来ている件「エンゲージメントサーベイは匿名と実名どちらで実施していますか?」について大塚さん回答をお願いしてもよいでしょうか?
大塚弊社では、匿名で実施しています。匿名の方が答える側としては素直に回答しやすいからです。もちろん、実名で実施してメンタルが大変そうな人を個別で対応したいというケースもありますので、目的によって使い分けるのが良いのではないでしょうか。
上林ワークショップでは、現場の管理職の方に全体では組織開発を行いつつ、個別では1on1を実施して状況を把握しましょうと回答しています。今の話だと本当に問題がありそうな方には、HRBPとして1on1を行うなど上手くまわす仕組みがあるのでしょうか?
大塚事業本部によって異なります。個別対応はもちろんやっていますが、基本的には事業本部にお任せしているという状況です。
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ありたい姿について話すと目線を上げて対話ができた

上林チーム内でコミュニケーションを取って、きちんと関係性を築くというのが大事であり、それを人事任せにすべきではないということが、管理職主導型の組織開発の肝だと思います。1on1だけでは限界があったところ、Cocolaboのツールを使ってグループのメンバー全員の意見を共有したところ、変化を感じられたということがポイントかなと思いました。対話が大事であり、合意するのではなく違いを認識しあうというのが大事だと思うのですが、対話をどのように捉えていました?
増永対話の言葉自体は、一方的に聴くことでも合意することでもなく、“違いを発見すること”であるという理解はしていました。しかし、仲の良いメンバーだけではない中で、喧嘩にならず上手くやるにはどうしたらよいかということに悩んでいました。
上林対話をやってみて、こうすれば上手くいく、ここを意識すれば大丈夫だと感じたことや、気づいたことはありますか?
増永最初に組織の目指す姿を話して、それに合意できた状態で組織に内在する課題を話すことで、目線を上に上げて対話をすることができたのではないかと思っています。
上林今回は全3回で、2回宿題(対話をする)を出すという形で実施しました。1回目の宿題では組織の問題は見ずに、「どのような組織を作りたいか」いわゆるTO BE理想形を対話し、2回目は組織の課題について対話するという構図にしたということですね。この構図の順番が良かったということですかね?
増永はい。最初に組織の目指す姿について対話をしたところ、皆さん想いがあるようで活発に対話ができたことは意外でした。
上林対話は価値があるので、現場でどんどんやってみて欲しいと思うのですが、やらない・やれないという管理職が多いのが実情です。対話を行うにあたっての壁はどこにあると思いますか?
大塚この手の活動は、管理職が忙しい問題が起こります。また、対話にはファシリテーション能力が凄く求められます。答えがない活動になりがちなので、結論が出ずに半信半疑で行うことになります。メンバーを巻き込まないといけないので、推進する際に、対話に良いイメージが持てずに場が作れないということもあります。しかし、研修の宿題としてやってみると「良かったです」という感想が意外に多く、勝手に対話の基準値を高め過ぎているのが問題だと感じています。

合意を取りに行った瞬間、エンゲージメントは下がる

増永仕事が忙しいので効率的に進めよう、部下を育成しなければならないという想いが強くなると、どうしても指導しようという意識になります。そうすると、上司側が合意を取りに行く、合意をさせるという行動になってしまい、部下側が反発して話を聞く気にならなくなります。双方の認識のギャップというのが大きいのだと思います。
上林合意をさせるという形になった瞬間、エンゲージメントが下がるという構造を理解する必要があるのかなと思いました。また、対話や組織開発の全体を理解することが大事なのかなと思いました。NRIさんでプログラムを実施した際に、対話って意味あるの?という問い対して、全体像を話したら、皆さん聞き入れやすくなったということがありました。最初の30分は対話をして、合意はせずにただ違いを尊重しあう時間、後半の30分は合意をして良いということをお伝えしました。 実際対話ツールを使ってみて具体的に良かった点と難しかった点を教えて下さい。
増永ツールはゲーム感覚でやれるので対話をするのに抵抗が少ないのが良かったです。普段思っているけれど、言い出せないという職場の問題を「オバケ」というツールを使って共有できたことが非常に良かったです。改善点は問題が発見されたのですが、どうしたら解決できるかは、自分たちの中で考えざるを得なくてその際にもう少しヒントがあればよかったです。
上林解決策を知りたい方々だと、確かにそこはやりづらいかもしれませんね。ゲーム感覚という点で、コンサルの方々は抵抗を感じる印象もありますが、実施はどうだったのでしょうか?
増永私のチームでは定例の時間の中で強制的にやりました。実際やってみると結局1時間近く対話をしており、それなりに表情は楽しそうだったので好評だったのかなと思います。
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なぜ、組織開発に重きを置くようになったのか

上林エンゲージメントを上げるために、いろいろな施策があると思いますが、その中で、管理職主導の組織開発に重きを置いていらっしゃると思います。管理職が自走するために何が大事だと思いますか?
大塚組織開発を勉強する中で、1+1+1<3になるというのを聞いて面白いと思ったことがきっかけで、組織開発に重きを置くようになりました。以前、社員という立場でパートナー会社と協業した際に、一次受け二次受けがあり一次受けが偉いという感じで接している人を見たときに、それってどうなの?と思ったことがありました。もっと良い雰囲気で仕事をした方が結果的に品質も上がると思った経験があり、その経験から組織開発を学んだ際に、これは今後の流れで大事なことなのではないかと興味を持ちました。
上林個人で働くではなく、チームで働くという良さ、そして1+1+1<3を体感すること自体が組織で働いて良かったという体験になるのかなと思いました。

メンバーを巻き込み、管理職が主導で組織開発をする

上林組織開発は管理職主導で参加させる、ここが大事だと思われたポイントを教えて下さい。
大塚ピラミッド型構造の組織にとって、キーとなるのは管理職です。現業が忙しい中で、チームメンバーを巻き込んでエンゲージメントを上げる活動に費やすというのは、管理職の方がキーになるのは間違いないです。自分がメンバーだった時、リーダーが組織開発をやってはいませんでした。しかし、今は、メンバーでも組織開発に興味がある人はゼロではないと思っています。管理職が自分ひとりで頑張るのではなく、仲間を見つけていき、役割分担をしてメンバーと一緒に組織開発をする環境を作っていくのが大事だと思います。
上林今、非管理職向けの研修を企画されているのはそういう背景があったんですね。
大塚今年のフォーラムの中で、メンバー層の方で組織開発の活動に興味があって、すごい勢いでやってくれている方を紹介するのですが、ポイントは管理職の方がその方を応援しているということです。
上林最近の若手の働きがいを管理職に話す際に、報酬や達成感ではなく良い人間関係だとお伝えしているのですが、ある意味若い方のほうが組織開発など良いチームで働くことを大事にしているので、若い方の力を活用することは有効かもしれません。
大塚私も自分がメンバーだった時に、課長から大塚がチーム作りを進んで頑張ってくれているというのを評価されたというのが組織開発の観点で嬉しかった記憶があります。
上林よく組織開発は効果がわかりにくいと言われますが、効果が見えにくい問題に対して何か意識されていることはありますか?
大塚毎月エンゲージメントサーベイを取っていますが、結果が自分で今のチームの状態がこうだよなと思う点と連動しています。割と活動するとシンプルに反映されるという印象があります。逆に本当に何もやらなかったら悲しいほど下がるというのがわかります。体重計として数値をしっかり分析するというよりそういう使い方をしています。
上林上層部など、上に伝える際に工夫されている点はありますか?
大塚私だと現実味を持って話すことができないので、取り組みをしている管理職の方々に話してもらっています。実際に取り組んでいる管理職の生の声を伝えることが大事です。

推進する側が組織開発の良さを体感すること

上林これから管理職主導型の組織開発を実施しようとしている企業様に、最後一言アドバイスをお願いします。
増永まず、管理職の方は皆忙しいので組織開発する時間なんてないと言うと思います。強制的にでも無理をしてでも時間を作ることが必要です。上司だとしたら部下の時間を取って話す、部下だったら上司の時間をもらい話してみることです。1回やってみると、少しは成功体験につながり、次の動きが促進されやすくなります。もう1つは、めげずに取り組むことです。組織開発の話をすると、ビデオオフで話を聞いているのかどうかわからないと感じることもあります。しかし、めげずに取り組むことで、少しずつメンバーの気持ちが変わるので、自分の意志を強く持つ必要があります。
大塚1つは、推進する側が「組織開発」が良いと体感しないとやる気も出ません。どんな小さな活動でも自分たちで組織開発を継続してやっていることが大事です。もう1つは、我々と一緒に頑張りましょうというメッセージです。こういったエンゲージメント向上の活動をしていくこと自体は、競合も関係なく答えもない世界です。こういう取り組みをシェアしていくことが大事ですし、上層部はスコアの結果を求めるなど進める側の苦しみもありますが、推進者同士で繋がって鼓舞しあっていけると良いと思っています。
上林本日は、貴重なお話をありがとうございました。管理職主導型の組織開発というのはこれから必ず求められてくるものです。組織開発力は、これから多様な人材が増えていく中で、1on1以上に必須のスキルになると感じています。マネジャーの方と話しても、組織開発ができれば、確かに自分は楽になると実感を得られる方も多いです。本日ご参加いただいた皆様の企業にとっても、組織開発が何か一つでもヒントとなれば幸いです。最後までご参加ありがとうございました。